Japanische Klassiker mit Furigana
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しほんたいへいき
私本太平記(一)
吉川 英治
Lesen Sie 私本太平記(一) (しほんたいへいき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 246.214 Zeichen · 495 Bildschirme
先頃の問注所の対決では、“御簾ノ廂”にいて、蔭ながら高氏の挙止や態度を、つぶさに見聞きしていた守時である。――が、なんでこんなに好意をみせて、今朝の出がけにまで、こう細やかに話しこむのか。
高氏に、守時の心は読めない。だが彼も、北条氏歴代の過去には、こういう正義と愛情に富む為政者にして武人であった君も、かつては、まま世にあったことを知っている。
よく民になつかれて、民治と仁政に心した三代の名主北条泰時、武門のつつしみを知って、宗教や学問を振わせた五代の最明寺時頼、また、元寇の国難の日をよく耐え凌いだ八代北条時宗――。
ぼんやり、それらの過去の像を胸に描きながら、高氏はまたひそかに「……この赤橋殿のようなお人も」と、その数のうちに入れて、その人の顔を見ていた。
――すると、廊ノ間の簾越しに、ちらと、美しい人影が立ってここの書院を覗いたように思われた。それは高氏の若い血にすぐ敏感な響きをおこした。えならぬ香気すら感じられる。――そして彼女の方は、客と知ってすこしうろたえたようであった。簾のすそに、手をつかえ、遠くから内へ、こう告げた。
「兄ぎみ様、もうお出ましのお時刻ではございませんか。