Japanische Klassiker mit Furigana
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しほんたいへいき
私本太平記(一)
吉川 英治
Lesen Sie 私本太平記(一) (しほんたいへいき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 246.214 Zeichen · 495 Bildschirme
「おやすいことでございます」
「なに、おやすいことじゃと。ムム、そちの脚くびを、餌にやるくらいなつもりなら難しくもあるまい。誰ぞ、犬奉行をこれへ呼べ」
呼ばれて来た犬奉行は、すでに前から、執権の意図をのみこんでいた者らしい。すぐ高氏を伴って、御犬寮へみちびき、たくさんな犬小屋のうちでも、特に牢の如き頑丈な小屋の一つを開いて。
「これが雷霆でござる」
「や。巨きな犬よの」
「癖犬でござれば、お気をつけて」
と、犬役人は言った。
気味の悪い注意の下に、彼の手には、首輪の細鎖があずけられた。
「……ははあ、さては都の意趣を、犬に代って晴らさんとする。執権殿のお悪戯だな」
――むかし、若宮の庭で、九郎冠者義経が、兄頼朝の命で、やむなく大工棟梁の馬を曳いたという故事は聞いていたが、鎌倉の群集と諸大名の前で、犬を曳かせられるとは……と、高氏はちょっと感傷を覚えた。
しかし、それは彼の翳ともなってはいなかった。彼は懸命に。「……しッ、しッ」と犬を小屋から追い出そうと努めた。だが犬はなかなか動かない。と思っているうち、いきなり、ぶんっ――と、それこそ雷霆のように、犬は自分の意志で外へ跳び出し、高氏は、勢いに引かれて、よろめきかけた。