Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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しほんたいへいき

私本太平記(一)

吉川 英治

Lesen Sie 私本太平記(一) (しほんたいへいき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 246.214 Zeichen · 495 Bildschirme

Aozora Bunko

もう一夜でもあることなら、いま私の習うている平家の曲の屋島でも、ぜひ聞いていただきますものを」

「いや、そうしてはおられぬ。いざ若殿」

右馬介は先に立って、又太郎をうながした。

二人は、六波羅並木、車大路の辻まで来て、ふと立ちどまった。

「あれを見い、右馬介」

「おあとに、何か」

「いや、覚一の姿が、まだわしたちを見送っておる」

「はて。見えもせぬ眼で」

「そうでない。見える眼も同じだ。わしたちを振向かせているではないか」

――この日、都を離れた主従は、当然、数日後には、東海道なり東山道の人となっているべきはずなのに、やがて正月十日の頃、二人の姿は、方角もまるで逆な難波ノ津(大阪)の端れに見出された。

渡辺党の発祥地、渡辺橋のほとりから、昼うららな下を、長柄の浜の船着きの方へ行く二人づれがそれで。

「若殿、どうしても、思い止まりはできませぬか」

「まだいうのか」

「でも、今日の便船にお乗りになってしもうては」

「そのため幾日も船宿で日を暮して来たのに、この期となって」

「――が、難波の諸所も、はからず見ましたこと。このたびは、ぜひこの辺でお引っ返し願いまする。お国元のお案じも、ただ事ではございますまい。