Japanische Klassiker mit Furigana
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しほんたいへいき
私本太平記(一)
吉川 英治
Lesen Sie 私本太平記(一) (しほんたいへいき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 246.214 Zeichen · 495 Bildschirme
さて。――輿が聟館に入れば、嫁方には実家女臈、聟方には待ち上臈、それぞれの介添えがついて、式の座につく。
登子は、白絹の小袿衣に、鬢鬘して、聟の高氏とならんだ。聟は、布袴直垂衣である。
床には、きのう草心尼が心をこめた立花や置鯉が飾られ、ふたりの前には、熨斗三方、向い鶴の銀箸、それに蛤の吸物などが供えられた。次に、媒人のあいさつ。――そして三々九度のさかずきごとが行われる。
上ゲ畳の御簾をへだてて。
両家一統、家臣たちまで、その間、ほのかに、杯事を拝しながら、粛然と、ひかえている。
――やがて三々九度が終り、同時に、御簾が上がって、
「幾千代、おめでとう存じあげまする」
一同、揃って祝いをのべる。
さきに、嫁迎えの使者が、途上で、こちらの脂燭に移し取って持ち帰った嫁方の火は、すでに閨の燈台にともされてあり、やがて、聟君が衾に入った次に、嫁の君も介添えされて、帳内に入るのであるが、その灯は、三日の間、消さないでおく。
そして四日目、初めて、色直しの衣裳にかえて、登子も足利家の北ノ方となった新妻の身をやっと自分に見るのであった。
その日は、夕方から雨となって、さしもつづいた盛儀の門も宵のまに閉じ、大蔵ヶ谷の大屋根は、早くからみな寝しずまった。