Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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しほんたいへいき

私本太平記(一)

吉川 英治

Lesen Sie 私本太平記(一) (しほんたいへいき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 246.214 Zeichen · 495 Bildschirme

Aozora Bunko

と、疑いもせず、藤五は笑って、

「われらには一ト言の愛想もいわず、そのくせお二た方へは、よくペチャクチャ喋べッておりましたな。矢矧の長者の娘とかいっていたが、なあ八郎太、あれや遊女ではなかろうか」

「いや、遊女めかした風はなかった。遊女ではあるまい」

「じゃあ、何だろう」

と、こんどは御厨ノ伝次へ。

「貴公、何だと思う」

「わからん」

伝次は、そッ気ない。

夜来からの藤五、八郎太、二人にたいする侮蔑と憤激で、満身は針となっている。

触れぬものをすぐ感じて、藤五の眼は仲のよい顔へ移った。

「八郎太、分ったよ」

「どう分った」

「あれや、建部の巫子にちがいないわ。巫子というものは、どこの巫子も色が白い。日蔭の花か、白狐みたいだ」

「ひょっとしたら、ほん物の白狐であったかもしれぬぞ」

「よせ」

藤五は、いやな顔をして、

「尼前さまにも、お気味悪う思われるわ。つまらぬ冗談はいわぬこった」

それきり二人は黙った。ちょうど、道もジメジメした長い木下闇へかかっている。

もし木の間隠れの谷紅葉が折々に見えなかったら、暗夜を行くのと変りはない。ひとり、その不気味さも知らぬ気なのは、明暗常に一ツにすぎぬ覚一だけだった。