Japanische Klassiker mit Furigana
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しほんたいへいき
私本太平記(一)
吉川 英治
Lesen Sie 私本太平記(一) (しほんたいへいき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 246.214 Zeichen · 495 Bildschirme
「ちょうど、十歳上に相成ります」
「十の違いか。わしがその年になるまでには、きっともう一度、都へ上る日があろうぞ。鎌倉のありかたと言い、眼に見た都のさまと言い、これがこのままの世でいるわけはない。おやじ、もう一壺、酒を持ってまいれ」
「や。そのように、お過ごしなされては」
「なぜか今夜は、腸がわしへ歌うのだ。飲むべき夜なれと、腸が申す。まあ、そういうなよ右馬介」
分別は、こちら以上にあるお人である。きかないご気性である点も、日頃の練武修学、すべてにおいてなのだから、かくなってはお守役の右馬介も、黙って控えてしまうしかない。
と、そのとき、まるで木枯しでも吹きこんで来たように、この小酒屋の軒ばから、
「オオ。ここはまだ開いていたぞ。酒だ、酒だ。おやじ、それに何ぞ温い物でもないか」
と、凄まじい人々の吐く白い息が、どやどやと、土間いっぱいに込み入って来た。
たちどころに、土間は小酒屋らしい混雑と雑言で、埋まった。
十数名の武者は、みな小具足の旅姿だった。といってもあらましは、足軽程度の人態にすぎない。争いあって、一碗ずつの酒を持ち、干魚か何かを取ってはムシャムシャ食う。