Japanische Klassiker mit Furigana
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しほんたいへいき
私本太平記(一)
吉川 英治
Lesen Sie 私本太平記(一) (しほんたいへいき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 246.214 Zeichen · 495 Bildschirme
これ以上流行の粋も尽しようがないほどだ。
かつまた、隠し化粧もしているのであるまいか。頬うるわしく唇紅く、小鼻のわきの黒子に好色的ないやらしさが気づかれるほかは、いかにも近江七郡の守護大名らしい恰幅の重さと、どこやらに狡さをかくした微笑までそなえている。
――ははあ。かかる態の人物の生き方やら嗜好をさしていうものか。
又太郎はふと思いついた。
ちかごろ“婆娑羅”という流行語をしきりに聞く。
おそらくは、田楽役者の軽口などから流行り出したものであろうが、「ばさらな装い」とか。「ばさらなる致しかた」とか。または「――ばさらに遊ぼう」「ばさらに舞え」「世の中ばさらに送らいでは」などと、その語意、その場合も、さまざまにつかいわけられている。
むかし山門の法師間には“六方者”という語があったが、婆娑羅の意味は、それに近くてもっと広い。――花奢、狼藉、風流、放縦、大言、大酒、すべての伊達をさしてもいうし、軌道を外れた行為や、とりすました者への反逆や、そうした世のしきたりに斟酌しない露悪的な振舞いをも、ひッくるめて、
――婆娑羅に生きる人。
といったりする。
だから今の世には、鎌倉のばさら執権の下に、ばさら御家人、ばさら市人、ばさら大尽、ばさら尼、さては、ばさら商売の田楽役者までが無数にいるのはふしぎでなかった。