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Japanische Klassiker mit Furigana

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しほんたいへいき

私本太平記(一)

吉川 英治

Lesen Sie 私本太平記(一) (しほんたいへいき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 246.214 Zeichen · 495 Bildschirme

Aozora Bunko

あなたは八幡殿からの正しいお裔。けれどまた、野州足利ノ庄で生れたままの田舎冠者、少しは他人の情や憂き目にもお会いになってみなければ……と。

そして、手ずから縫った守り袋の地蔵菩薩を餞別にくれたのだった。が、その守り袋は、つい、藤夜叉へ与えてしまった。

「……はて、母にはすまぬことを」

彼はふと、悔いに噛まれた。

与えるにせよ、物にもよる。なんで藤夜叉へ、あれを与えてしまったろうか。――母は、女に与えよとて、地蔵菩薩の守り袋を、旅の子の門出にくれたわけではなかった。

母にすまないことをしたと思う。が高氏は、気どがめを、しいて心のすみへ押しやった。そして自分勝手な考え方をいつかしていた。母の願いは、わが子が多少とも世間を知って帰ることにあったのだから、その点では決して母を裏切ってはいないのだ、と。

「母の仰せどおり、わしは観て来た。……井の中の蛙が世間の端をのぞいたほどな旅かも知れぬが」

彼は自負する。

この旅が無為でなく、大いに学び得た旅だったとは、信じているのだ。

が、さて。

時勢のうごきとか、世相の表裏とかいった対象になると、彼の思考にはちと大きすぎた。