Japanische Klassiker mit Furigana
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しほんたいへいき
私本太平記(三)
吉川 英治
Lesen Sie 私本太平記(三) (しほんたいへいき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 222.108 Zeichen · 446 Bildschirme
それがこのとき京から前線まで、無軌道にあふれたのだから、味方同士の喧嘩沙汰も引ッきりなしであったらしい。小田時知の陣所と同輩の宿所との間では、すでに同士討ちの合戦が起るところだったと「花園院御記」のうちにはある。
連日、敵のその虚を突きつつ、正成は十月二十日がらみとなって、ついに悲壮な一令を、赤坂中の将兵に触れ出した。
「よく戦った。矢は尽き力も果てるところまでやった。ところで今夜、正成は死のうと思う。生きたい者は落ちるがいい。別れても止まっても、ここまで信じあった者、二心とは思わぬ。随意、どこへでも落ちてくれい」
もとより正成の真意はべつにある。最後とは本心ではない。むしろ、阿修羅の世に、ぜひなく悪鬼正成と生れかわった自己の修羅道の苦患は今日が第一歩ぞとさえ、ほんとには思っている。
けれど。
もう後悔をおぼえだしている兵も中にはあるにちがいない。かりにじぶんがただの一兵だったら、この二十日あまりの血の籠城だけでもうたくさんだ。泥水をすすって野に生きるまでも逃げ出したくなるだろう。そうした者までを、このさき無限の修羅道へひッ抱えてゆく気にはなれなかった。