Japanische Klassiker mit Furigana
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しほんたいへいき
私本太平記(三)
吉川 英治
Lesen Sie 私本太平記(三) (しほんたいへいき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 222.108 Zeichen · 446 Bildschirme
そこで、
「正成は今夜死ぬ覚悟」
と、彼らへ告げ、
「生きたい者は、どこへでも落ちて行くがいい。ここまでもよく戦ってくれたぞ」
と、礼までいったわけである。――が、寂としたきり、土塊の群れを思わせる将士の列はいつまで何の声だになかった。かすかな列のせせらぎは鬼みたいな男が顔をおさえているすすり泣きなのだった。
「さて心には思うても、おたがいの前では、あらわにも言いえまい。いま名のり出よとはいわん。……深夜、ここが火の手となるいぜんに、随意思うところへ落ちのびてよいぞ」
言いわたしは終った。
だが、それからの指揮は峻烈そのものだった。
砦のうち二ヵ所ほどに大坑を掘らせ、あちこちの屍をみなその中へ運ばせる。もちろん敵方の死骸も拾い残さない。
正成の所持の品、持仏、経巻なども、一つの坑へ入れた。さらには、一トすじの菊水の旗もそえておく。
そうして、たそがれにいたると、正成は、糧倉の物や、わずかな酒も、すべて取り出させて、
「思うざま、名残りを尽せ」
と、全城に振舞った。
いつにない大どかな炊ぎの焚き火が、砦の丘をあかあかと浮きあがらせた。その頃まではまだ一員の脱落者もみえなかった。