Japanische Klassiker mit Furigana
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しほんたいへいき
私本太平記(三)
吉川 英治
Lesen Sie 私本太平記(三) (しほんたいへいき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 222.108 Zeichen · 446 Bildschirme
ご辺こそ、ずいぶんお身大事にしておられよ」
自然、語気に陰性なふくみがあった。言いすてると、墨を吐いた烏賊のように、道誉の駒影はもう高氏をおいて、彼方へ駈け去っていた。
駈け去りながら道誉はクツクツ内心で快味を覚えた。――後で、唖然と自分の駒を見送っているであろう高氏の顔が、彼にはおかしい腑抜け顔に描かれていた。
「這奴。おれの機嫌をとるつもりだったな。ふざけるな。小右京の件を、それで帳消しなどとは虫がよすぎる」
もとよりこれは彼の胸だけのものである。やがて待たせておいた黄母衣以下の先頭に立って悠々と行く彼のうちに、そんな毒が在るとはたれの目にも見えない。
すでにその道誉は、洛内巡察もすませ、佐女牛の邸へ戻っていた。
「――まずは今夜も無事」と、自祝のくつろぎにかかっても、疲れは知らない肉体らしい。手にはすぐ杯、周囲には、女たちの香を立ちけむらせないでは、我に返った気もしないかのような彼だった。
「殿。……お憩いのまに、早川主膳めが、そっとお目通りを願っておりますが」
黄母衣の一人、田子大弥太がおそるおそるこう言って来た。あんのじょう、主膳と聞くと、道誉の酒機嫌は一変した。