Japanische Klassiker mit Furigana
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しほんたいへいき
私本太平記(五)
吉川 英治
Lesen Sie 私本太平記(五) (しほんたいへいき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 252.330 Zeichen · 505 Bildschirme
「怒ったろう」
「おれでも怒る」
「ましてや円心入道だ」
「あの戦下手な公卿大将の千種殿さえ大国三ヵ所も受領したというのに、その人を扶けて、早くから中国の勢を狩り催し、六波羅攻めにも、獅子奮迅のはたらきをした赤松勢がよ」
「このあつかいでは、恩賞の不平よりは、武士として顔が立つまい」
「勇猛をほこる円心だけに、一族や部下を死なせた数も、赤松が一番だろうといわれておる」
「ばかばかしさよ、とあの円心が、おもてに朱をそそいで、沙汰書を引き裂いて捨てたというが、目に見えるようだ」
と、衆口は、みな円心に、同情的だった。
果たして、それからまもなく、赤松円心の一勢は、朝廷へも届け出ず、ただ一書を六波羅の高氏へ投じたのみで、憤然、京をひきはらって国元へ帰ってしまった。
それを見た日も、武士大衆は、
「むりはない」
と、みな言った。みな円心の後ろ姿を思って気のどくがった。けれど、かえりみて自分たちが必死を賭けて、いま、掌に乗せ得たところの恩賞を見ると、
「……何と、これは」
と、一抹の不満と淋しみを噛む顔でない者はない。内々たれもが、自己の功には過大な期待を持ちすぎるものではあったが、やがて彼らの間に起ったやり場なき不平の色は、ただ単にそれだけのものでもなかった。