Japanische Klassiker mit Furigana
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しほんたいへいき
私本太平記(五)
吉川 英治
Lesen Sie 私本太平記(五) (しほんたいへいき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 252.330 Zeichen · 505 Bildschirme
「おゆるしを給わるなら、ふたたび山へ戻って、静かに、歌の道でも励んでいとうございまする」
「叡山へ帰りたいのか」
「はい」
「やはりそちは歌の家、二条為子の腹の子ではあるの。いまこそ人はそれぞれに――すみ染めの色をも更へつ月草の、移れば変る花のころもに――とみな栄耀を愉しもうとしておるのに」
「いえ、沙門の身と、歌詠むことさえ、ゆるしていただけたら他に何も欲しくはありません。……のう、友には、そなたという者がおるし」
と、ふと親王は、わが懐をのぞいて言った。
ご不審がられて、帝が、そも何を抱いているのかとお訊ねになると、親王は、一羽の雀を掌にのせてお見せした。――そしてこれは、去年、播州の加古川から船で讃岐へ送り渡される朝、兼好という法師に仕えている童から餞別にもらった雀の子を配所で育てたものですと語り、そしてこの日の父子邂逅に、はじめて一つニコとなされた。
まもなく、宗良親王は、叡山へ上って、元の天台座主につき、願いどおり墨染の身に返った。
「おなじ竹の園生、おなじ御子ながら、違うものかな」
と、世人は言った。
ことばの裏に、大塔ノ宮をさしていたのはいうまでもない。