Japanische Klassiker mit Furigana
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しほんたいへいき
私本太平記(五)
吉川 英治
Lesen Sie 私本太平記(五) (しほんたいへいき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 252.330 Zeichen · 505 Bildschirme
「だって、雀じゃないが、おらならここを出られないこともないよ。あの高い切窓からね」
「それよりおまえはどうしてここへ入れられたのだ」
「河原の落首が悪かったんだよ。よく河原へ落首が立つだろう。あれをうちの兼好さまが、いつも面白がっておいでだから、使いに出るたび河原へ廻って、書き写してはお目にかけていたんだよ。……すると運悪く、きのう役人に見つかってさ。……でもおらあ、死んでもお師匠さんの名は口に出さないときめてたからね」
自分はまるでこの中でない圏外にでもいるような彼の明るさなのだった。むしろの上のあちこちに澱んでいた男やら女やらの影は、急にワラをもつかみたい目つきになって、彼のことばに耳を研いでいた。
命松丸はなお言った。
自分のお師の兼好さんはお顔がひろい。たとえば雑訴決断所の寄人佐々木道誉さまなども古くからのお友達だ。――だからそうした御知人の門をあるけば、何とか助かる道がつこう。嘘じゃない、おらを信じて、その訴願の使いに出してみてくれ。首の座を前に、これだけの人間がただ悲しんでばかりいるなんて、余りに能がなさすぎるじゃないか、おらでさえ見ていられない……と、昂ぶって説くのであった。