Japanische Klassiker mit Furigana
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しほんたいへいき
私本太平記(五)
吉川 英治
Lesen Sie 私本太平記(五) (しほんたいへいき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 252.330 Zeichen · 505 Bildschirme
「六波羅一つが、北条のとりでとはかぎりません。金剛方面には、なおつつがなき数万騎をひかえ、鎌倉までの途中とて、諸国には、頼みあるお味方も少なしといたしませぬ」
「わけて近江伊吹には、執権のご信頼あつき佐々木道誉もおりますこと。……また佐々木の同族、六角時信も、粟田口あたりで加わるはずでござりますゆえ」
「なにとぞ、お心づよくおぼしめし賜わりますように」
「こう、われらがお付添いまいらすうえは……」
みかどは、ただ茫として、
「鎌倉へ行くのか」
と、心細げに、うなずかれる。鬢を吹くかぜが白いお顔を研ぐ。
両探題は、すぐ、
「御馬上へ」
と、みかどへも、法皇上皇へも、駒をすすめた。輿もおびただしく用意され、女院や尼前の足弱は、兵に舁かれた。
蹴上には、六角時信の兵二、三百がお待ちしていた。しばらくは坂である。ふりかえると洛外洛中の暗々黒々な一地界は、ただ炎、炎、炎……の糜爛だった。
あけがたの星はまだ白かった。瀬田ノ大橋が淡く見え出す。
「やれ……」
と、みな眉をひらいた。
足弱な公卿宮人を連れての兵馬としては早かった。それにまず途中の難にもあわなかった。じつは内心、叡山にある大塔ノ宮一味からの襲撃をなにより怖れていたのである。