Japanische Klassiker mit Furigana
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しほんたいへいき
私本太平記(五)
吉川 英治
Lesen Sie 私本太平記(五) (しほんたいへいき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 252.330 Zeichen · 505 Bildschirme
けれどその千余騎の落人――主上の駒から女院たちの輿までが、とどろに、瀬田の大橋の上へかかるやいな、
「敵がいる」
と、意外な方から、あとの足なみを押しもどしてきた。
とつぜん、橋詰の口をはさんで射浴びせて来た矢かぜであった。数騎は落馬し、あとの駒も、けたたましく、いなないた。
「油断すな。伏勢らしいぞ」
「もどせ、もどせ」
「足場がわるい」
声々、立ち騒ぐ中で、
「知れたもの! 駈け抜けろ」
左近将監時益は言った。
「射て来るものは、どれもこれも古矢ばかりだ、磨きのない拾い矢ばかりぞ。察するに敵らしい敵ではない。野伏だわ。野伏ばらに足もと見さすな」
なるほど橋づめの柳の原にチラチラ隠現している黒いものには楯も旗も陣容らしい秩序はなかった。漁夫、半農のたぐいが、野太刀や弓を持ち、それに半端な具足をつけ、また中には、ゆうべ限り六波羅方に見切りをつけて、たちどころに、野盗と変じた逃亡兵なども交じっているかと思われる烏合だった。
しかし、数には驚くべきものがあった。追えば追うほどわんわんふえてくるのである。――ひとたび権力の座をすべれば――こうも彼ら狼の群れにまで足もとを見くびられるかと、仲時も時益も、暗然と、思い知らされたことだった。