Japanische Klassiker mit Furigana
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ちくはくき
竹柏記
山本 周五郎
Lesen Sie 竹柏記 (ちくはくき) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 45.798 Zeichen · 91 Bildschirme
お聞かせ下さいませんの」
「もういちど云うが」
できるだけ穏やかに、妻の顔を見ながら、孝之助が云った。
「岡村とわれわれとは、もうなんの関わりもない、彼がお咎めを受けたことは、気の毒に思うけれども、私は詳しい事情を知らないし、知っていたにしても、おまえに話す必要はないと思う」
「わたくしが望んでもでございますか」
「誰が望んでもだ」彼は静かに、しかしきっぱりと云った、「――私たちのあいだでは、決して岡村の名を呼ばないように、これだけはよく覚えていて貰いたい」
結婚して以来、初めての、屹とした云い方だった。杉乃は怒りの眼で彼を見、膝の上で両手を握りしめた、彼は静かに立ってそこを出た。
祝言の夜のときよりも、孝之助の心は深く傷ついた。妻は彼を愛そうとしない、これまで夫婦のかたらいなどもあまりに冷たく、殆んど石に対するようなものであった。それは或る点まで承知のうえだし、時間をかける覚悟はできていた。けれども、その晩の態度では、単に彼を愛さないばかりでなく、まだ岡村を忘れないでいるらしい。
――貴方の想像どおりになった、さぞ愉快であろう。
そういう意味を含めた言葉と、あの眼と、その刺すような調子とは、明らかに岡村八束の側に立ったものである。