Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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かさおりはんくろう

笠折半九郎

山本 周五郎

Lesen Sie 笠折半九郎 (かさおりはんくろう) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 13.004 Zeichen · 26 Bildschirme

Aozora Bunko

二

ではあるまいし、火事場の働きで恩典にあずかろうなどというさもしい考えは微塵もないぞ、つまらぬ話はいい加減にやめろ、馬鹿げている」

「おい、……笠折、それは少し言葉が過ぎはしないか」

一人が急に眼を光らせて乗出した。

「我々は誰のために云っているのでもない、むろんお上に対して御批判申すのでもない、ただ身命を賭して御宝物を救い、お櫓を守ったという事実を云うのだ、持場を焼いた者たちにさえ恩賞があったのに、それだけの働きをした者になんのお沙汰もないという事実を云っているんだ。……それに対して火消人足でないとは言葉が過ぎるぞ」

半九郎はむかむかと忿がこみあげて来た。しかし懸命にそれを抑えて黙っていた。……相手は書院番の麻苅久之助という、小意地の悪い女のように嫉妬深いので有名な男だった。口の下手な半九郎などの敵すべき相手ではない、それで哀しくも彼は沈黙を守った。

二

「火消人足とは変なことを云う」

相手は鬼の首でも取ったように、なおも執念く傍の者を捉えて続けた。

「自分はなにか理由があるとして、取澄しているならそれで宜いさ、しかし傷だらけになって、命を的に働いた十七人の組下が可哀そうではないか、火消人足ではないなどと、見当違いなことを云う暇があったら、少しは組下のことも考えて遣るべきだ」