Japanische Klassiker mit Furigana
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かさおりはんくろう
笠折半九郎
山本 周五郎
Lesen Sie 笠折半九郎 (かさおりはんくろう) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 13.004 Zeichen · 26 Bildschirme
近寄って来たのは頼宣であった。
「抜け、抜け半九郎」
頼宣は静かに呼びかけた。
半九郎は即座に大剣を鞘ごと腰から脱り、それを遠く投出しながら、砂上に平伏した。……頼宣は大股に歩み寄って、砂上に伏した半九郎の側へ片膝を突くと、左手でその衿を掴み、拳をあげて頭を殴りつけた。
「馬鹿者! 馬鹿者、馬鹿者!」
三つ、四つ、五つ、痺れるように痛い拳だった。しかしその痛さは、そのまま頼宣の愛情の表白であった、半九郎はその痛さを通して、大きな主君の愛情を直に感じ、これまで自分を毒していたあらゆる妄念が、そのひと打ち毎に、快く叩き潰されるのを感じた。
頼宣はやがて手を放した。よほど力を籠めて打ったとみえて、暫く荒い息をしていたが、
「……二十年も予に仕えながら」
と顫を帯びた声で云った。
「その方にはまだ予の気持が分らぬのか。……先日火事のおり、命を冒して宝物を取出し、また角櫓を防ぎ止めたことは手柄であった、遖れよくしたと褒めてやりたかった、しかし予は一言も褒めなかった、他の者には恩賞をやったが、その方にはなにも沙汰しなかった。沙汰せずに置いても予の気持は分るであろうと思ったからだ」