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Japanische Klassiker mit Furigana

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かがりびのおんな

篝火の女

吉川 英治

Lesen Sie 篝火の女 (かがりびのおんな) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 27.727 Zeichen · 56 Bildschirme

Aozora Bunko

海には、唐船が帆ばしらを並べ、街には、舶載物を売る店舗や、武具をひさぐ商人が軒をならべ、裏町には、京や堺から移住して来た工匠たちが、糸を染め、鏃を鍛え、陶器を焼き、殷賑な煙がなびいていた。

『文化は進んでいるが、そのかわりに、人間は甘いぞ』

と、石田大七は、すたすたと、城下へ向って足を早めながら、愈※(二の字点、1-2-22)、北条を見くびった。

酒匂の木戸は、往来人の検めに厳密をきわめていたが、誰あって、彼を敵国の乱波者(間者)と見やぶる者はなかった。

だが、その彼の姿を見ると、町の洟たらしや、しらくも頭や、悪童たちが、

『やあい、ぼんやり飴屋』

『唖か』

『唄を忘れたのか』

『胸の人形が欠伸しているぞ』

と、ぞろぞろ尾いて来て、揶揄った。

大七は、ぎょっとした。

ここが北条氏康、氏政の本拠かと、事々物々に思わず眼を奪われて、うっかり歩いていたのであるが、気がついてみると、自分の姿は、阿波人形を飴箱の上に乗せ、それを首に掛けている飴売なのだ。その飴売が無口になって、眼ばかり光らせて歩いていては、なる程、唖と思われよう。

『子どもは、怖い』

と、呟やきながら、大七は、朱い横笛を持って、城下の辻で、ひゃらひゃらと吹き初めた。