Japanische Klassiker mit Furigana
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かがりびのおんな
篝火の女
吉川 英治
Lesen Sie 篝火の女 (かがりびのおんな) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 27.727 Zeichen · 56 Bildschirme
黄母衣護送
『東郷五郎左衛門の娘八雲どのか』
と、念を押した。
『はい、かねて、三郎進様から御密書をいただいた八雲に相違ございません』
答えるが早いか、
『天命だっ』
甲冑の旗本が、背中をどんと突いた。
鉄の桶でもぶつけられたように、八雲は前へよろめいた。左右からも前からも、途端に、物の具の固い腕が、彼女の嫋よやかな腕くびをつかみあげて、
『ここは、北条方の里見義介が陣だ。よくも、八雲と、自分から名乗ってきたの』
『げッ……。では……先に崩れて行った騎馬武者たちは』
『あれも、安中三郎の兵ではない。常陸下妻の上杉方の一党で、安中城の危急を聞いて、援兵に馳せつけようという途中を、こっちで先に出鼻をくじいてやったのだ』
『アア……』
石に挫がれた白い花のように、八雲は地に顔を横づけた儘、その両手を荒縄にまかせてしまうほかはなかった。
黄母衣護送
馬蹄や、具足をつけた草鞋が、ぱくぱくと埃を持ち上げる。真っ黄いろに空は汚れて、太陽が黒く見える。
大利根からうごきだした北条勢の一部が、灼きつくような三伏の道を、蛇形になって、安中城の方へいそいでいた。
『仆れる奴など捨てて行けっ。暑さで参るような人間が、物の役に立つかっ』