Japanische Klassiker mit Furigana
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かがりびのおんな
篝火の女
吉川 英治
Lesen Sie 篝火の女 (かがりびのおんな) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 27.727 Zeichen · 56 Bildschirme
木賃宿の亭主は、
『せっかく寝たところを、起されてしもうた』
ぶつぶつ呟いて、後の戸を閉めたが、ふと、女房や子ども達の寝ている夜具のすそに、見馴れない田舎娘がもぐっているのに気がついて、
『あれ? ぬしゃあ、誰だ』
『おら、宵に泊った客だがな』
と、田舎娘は笑った。
『なんじゃ、お客か。ここはわし達の寝るところじゃ。戸惑いするも程がある』
『でもな、怖くて怖くて。もうお士たちは去んだかの』
『去んだわ、起きなされ』
亭主は、蒲団をめくった。
要心のいい娘である、足ごしらえもちゃんとしていて、
『御免して下され』
謝まって出て行った。間がわるいのか、翌朝は、この娘が一番早く宿を発った。
隅田河原で、娘は、もんぺの下紐を括りあげていた。
『――深い所もあるから気をつけな。負ぶってやろうか』
馴々しい声に、振り顧ってみると、きのうの外郎売である。
ざぶざぶと、外郎売は、先へ渡って行ったが、娘が、草加並木まで来ると又、
『女にしては、脚がはやいね』
並木から腰をあげてついて来た。
『ゆうべ、宿場のお検めがあったが、知ってるかい』
『あ、知っていたよ』
『よく陣屋へ連れて行かれなかったね』