Japanische Klassiker mit Furigana
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ささめゆき
細雪
谷崎 潤一郎
Lesen Sie 細雪 (ささめゆき) von 谷崎 潤一郎 (たにざきじゅんいちろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 226.715 Zeichen · 431 Bildschirme
あろうこと、阪大の偉い先生の来診を仰いだらと云う斎藤医師の提議もさることながら、それも下手をすれば病人に気を廻させる恐れがあるので、先ず櫛田医師を招いて、その意見を徴してからでも遅くはないであろうこと、等を慮ったからであった。妙子は幸子がしゃべっている間、放心したような眼を、ぼんやりと、つい鼻の先の畳の上に落して聴いていたが、
「なあ、こいさん、それでええわな?」
と、幸子が促すと、
「うち、櫛田さんにこんな所へ来て貰いとうないわ。………」
と、何と思ったか急にきっぱりした語気で云った。いつの間にかその眼には涙が一杯浮かんでいた。
「………うち、こんな所にいること、櫛田さんに知れたら耻かしいわ。………」
看護婦が気を利かして、すうっと座を立って行ったあとに、幸子と、雪子と、奥畑とが、はっとした顔つきで、病人の頬を流れ出した涙を見ていた。
「ま、その話は、僕がゆっくりこいさんに聞いて見ますよって、………」
病人を中に置いて幸子たちの向う側に、寝足りない、脹れぼったい顔をして、フランネルの寝間着の上に藍鼠の絹のナイトガウンを着て坐っていた奥畑が、狼狽の色を包みきれない様子でそう云いながら、幸子の方へ訴えるような眼差をちらッと向けた。