Japanische Klassiker mit Furigana
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ささめゆき
細雪
谷崎 潤一郎
Lesen Sie 細雪 (ささめゆき) von 谷崎 潤一郎 (たにざきじゅんいちろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 226.715 Zeichen · 431 Bildschirme
と、悦子が缶を恨めしそうに眺めながら云った。
「どれ、蜘蛛を捕って上げましょう」
斜交いの席に、この出来事を笑いながら見ていた、この地方の人らしい五十恰好の和服の男が、そう云いながらその缶を取って、
「ちょっと毛ピンか何かをお貸し下さい」
と、幸子から毛ピンを借りた。そして、缶の中から一つ一つ蜘蛛を挟み出しては床に捨て、丹念に下駄で蹈み殺した。毛ピンの端には蜘蛛と一緒に草が絡まって出て来たりしたが、好い塩梅に蛍はあまり逃げ出さなかった。
「お嬢さん、大分蛍が死んでいますよ」
男はガーゼを括り直すと、缶を左右に傾げて見て、
「―――洗面所へ持って行って、少し水を懸けておやりなさい」
「悦ちゃん、ついでによう手を洗うて来なさいや、蛍に触ったら毒やさかいに」
「蛍は臭いね、お母ちゃん」
と悦子は自分の手の匂を嗅ぎながら、
「草のような臭がするね」
「お嬢さん、蛍の死んだのはお捨てになったらいけませんよ。取って置くと、薬になりますよ」
「何の薬になりますのん」
と、妙子が聞いた。
「乾して保存して置いて、火傷や怪我をした時に、飯粒と一緒に練ってお着けになるんですな」
「利きますか、ほんとうに」