Japanische Klassiker mit Furigana
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ぶんがくずきのかていから
羅生門・鼻・芋粥
Lesen Sie 羅生門・鼻・芋粥 (ぶんがくずきのかていから) von Akutagawa Ryūnosuke (芥川 竜之介) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 31.240 Zeichen · 69 Bildschirme
大川の水
自分は、大川端に近い町に生まれた。家を出て椎の若葉におおわれた、黒塀の多い横網の小路をぬけると、すぐあの幅の広い川筋の見渡される、百本杭の河岸へ出るのである。幼い時から、中学を卒業するまで、自分はほとんど毎日のように、あの川を見た。水と船と橋と砂洲と、水の上に生まれて水の上に暮しているあわただしい人々の生活とを見た。真夏の日の午すぎ、やけた砂を踏みながら、水泳を習いに行く通りすがりに、嗅ぐともなく嗅いだ河の水のにおいも、今では年とともに、親しく思い出されるような気がする。
自分はどうして、こうもあの川を愛するのか。あのどちらかと言えば、泥濁りのした大川のなま暖かい水に、限りないゆかしさを感じるのか。自分ながらも、少しく、その説明に苦しまずにはいられない。ただ、自分は、昔からあの水を見るごとに、なんとなく、涙を落したいような、言いがたい慰安と寂寥とを感じた。まったく、自分の住んでいる世界から遠ざかって、なつかしい思慕と追憶との国にはいるような心もちがした。この心もちのために、この慰安と寂寥とを味わいうるがために、自分は何よりも大川の水を愛するのである。