Japanische Klassiker mit Furigana
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うつくしきつきよ
美しき月夜
宮本 百合子
Lesen Sie 美しき月夜 (うつくしきつきよ) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 9.063 Zeichen · 18 Bildschirme
彼等にとって、贅沢(ぜいたく)な流行品の存在が、何ら関心の材料にもならなかった如くに、あらゆる空想というものが、生活から駆逐されていた。結局実現も出来ない空想に心を奪われてボカンとして過す五分が、何を産むだろう? 彼等に望外の野心もなかった。激しい口論を起すべき衝突もまたない。単調な田舎の圏境が、いつか人の心に与える不思議な催眠で、光沢のない水色のような生活が、彼等の結婚後三年の月日を満たして今日に至ったのである。
Wが、安い月給取りであるということ、彼の妻は、また彼にふさわしいよき主婦であるということは、そこに何の華やかさもない代りに、彼には平和な信頼を与えた。彼は毎月定まった金額を彼女の掌(て)に渡す。何の不安も、焦燥も感ぜずにその金は彼女の配慮で日常の生活を満たして行く。
天気の晴々と輝きわたった夏などに、昼飯に戻って来た彼は、よく子供達に取繞(とりま)かれながら裏の草原で洗濯物を乾しているマーガレットを見出すことがあった。
金色の日光がキラキラと金粉を撒くように降り注ぐ明るみの中で、嬉戯(きぎ)する子供等と、陽気な高声で喋りながら、白く肥った腕を素早く動かして、張りわたした綱に濡れた布を吊る彼女の姿は、どんなに彼の心を悦ばせたことだろう。