Japanische Klassiker mit Furigana
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うつくしきつきよ
美しき月夜
宮本 百合子
Lesen Sie 美しき月夜 (うつくしきつきよ) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 9.063 Zeichen · 18 Bildschirme
一足毎に大きなかごを傍へ傍へと引寄せながら、上下する体の運動につれて、愉快な小唄を口誦む彼女。跼(しゃが)む機勢(はずみ)に落ちかかる後れ毛を、さもうるさそうに手の甲で掻き上げながら、ちょっと頭をあげて大きく息をする彼女。そこには若い母親の豊饒な愛が、咽(む)せるほど芳しく漂っている。見馴れた光景でありながら、その家庭的な情景に逢うと、彼は湧き上る感謝を圧えることができなかった。よき家である。よき妻や子等である。わざと木影に隠れて、我れともなく恍惚とした父親を真先に見つけた子供達が、弾む小毬(こまり)のように頸や胸元に跳びつく頃は、微風に連れて雲のように膨れたり萎んだりする白布を背景にして、眩ゆそうに額際に腕を挙げたマーガレットが、血色のよい頬に渦巻くような笑を湛えながら、“Halloo dear”と野放しの声を投げる。
質素な木綿着物に包まれた彼女のほっそりとした体の周囲からは、やや田舎めいた、清潔な快い糊のにおいがプント立ちのぼるだろう、濡れて光る双手、小さい汗のために水蜜桃のような顎――あらゆるものが彼女の母性(マザーフット)を囲んで耀くように見えた。