Japanische Klassiker mit Furigana
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ちゅうどく
聴雨・螢 織田作之助短篇集
織田 作之助
Lesen Sie 聴雨・螢 織田作之助短篇集 (ちゅうどく) von 織田 作之助 (おださくのすけ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 18.162 Zeichen · 37 Bildschirme
「うわッ! えらい煙どんなア」
はいって来た妓の声がちくりと胸を刺し、その妓の顔は、彼女とはくらべものにならぬくらい醜く、下卑ていた。
仁丹を買うためにパトロンを作った彼女は、煙草も酒も飲まず、酒場のボックスでは果物一つ口にしない行儀のよさが、吉田の学生街のへんに気取ったけちくさいアカデミックな雰囲気に似合っており、容姿にも何かあえかなノスタルジアがあった。
そんな彼女が葉巻のにおいにむせている顔を想像しながら、私はなるべく妓の体と隙間を作って横になり、やけに煙草をふかしていた。妓は煙をいやがって、しまいには背中を向けたが、
「君!」と、振り向かせるには、余りにぶくぶく肥えて、その肉のかたまりを包んだ長襦袢の襟は手をふれるのもためらわれるくらい、垢じみていた。しかし……。
朝、娼家を出た私は、円山公園の芝生に寝転んで、煙草を吸った。背を焼かれるような悔恨と、捨てられた古雑巾のような疲労! 公園のラジオ塔から流れて来るラジオ体操の単調な掛声は、思いがけず焦躁の響きだったが、私は何もしたくなかった。学校へも行きたくなかった。音楽も聴きたくなかった。映画も芝居も本も、面倒くさかった。