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Japanische Klassiker mit Furigana

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ちゅうどく

聴雨・螢 織田作之助短篇集

織田 作之助

Lesen Sie 聴雨・螢 織田作之助短篇集 (ちゅうどく) von 織田 作之助 (おださくのすけ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 18.162 Zeichen · 37 Bildschirme

Aozora Bunko

歩くのも食うのも億劫だった。私には何一つすることがなかった。ただ煙草を吸うことが、わずかに残されていたのである。

そして、それから大分たって、彼女が、

「もう会うのはよしましょう。あなたを苦しめるだけだから」

と、月並みだが、私にとっては切実な言葉を言いに、私の下宿へやって来た時も、私はまず煙草を吸った。それからオイオイ泣き出して、そして、また煙草を吸うために泣きやんだ。

私は彼女とは立ち入った関係はなかったが、会えば唇にだけはふれていた。私は彼女の仁丹のにおいのする口臭を、永久に忘れがたいだろうと思った。未練たらしい私は、彼女が化粧を直して私の部屋を出て行く時、せめて最後の口づけだけでもしたいと思った。が、その時たまたま……というより、その時もまた私は煙草をくわえていた。おかげで、私は気障な真似をせずに、彼女と別れることが出来たわけである。

今はもうその時の実感を呼び起すだけのナイーヴな神経を失っているし、音楽でも聴かぬ限り、めったと想いだすこともないが、つまらない女から別れ話を持ち出されて、オイオイ泣きだしたのは、あとにもさきにもこの一度きりで、親が死んだ時もこんなにも取り乱さなかった。