Japanische Klassiker mit Furigana
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ちゅうどく
聴雨・螢 織田作之助短篇集
織田 作之助
Lesen Sie 聴雨・螢 織田作之助短篇集 (ちゅうどく) von 織田 作之助 (おださくのすけ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 18.162 Zeichen · 37 Bildschirme
父親の庄之助は、ステテコ一枚の裸になって、ピアノを弾いていたが、ふと弦から流れる音の力強い澄み切った美しさに気がつくと、急に眼を輝かせた。そして唸るような声が思わず出た。
「寿子、今の所もう一度弾いてみろ」
「うん」
寿子は、自分が弾き間違ったので注意されたのだ、と思い込みながら、ベソをかいたような顔でうなずいて、再び弾きだした。ジプシイの郷愁がすすり泣くようなメロディとなって、弦から流れた。九つの少女の腕が弾いているとは思えぬくらい力強い音であった。
それは、かつて寿子のヴァイオリンから聴けなかったものだった。いや、教えている庄之助自身、このような音が一度だって出せたかどうか。まるで通り魔のような音であった。
庄之助はまるで自分の耳を疑うかのように、キョトンとして、暫く娘の蒼白い顔を見つめながら何やらボソボソ口の中で呟いていたが、やがて何思ったか、
「寿子、生国魂さんへお詣りしよう」
と言った。
「パパ、ほんまか」
寿子はあわててヴァイオリンをピアノの上に置くと、隣の部屋へかけ込んで、汗だらけのシュミーズの上に、よれよれの、しかし花模様のついたワンピースを着た。