Japanische Klassiker mit Furigana
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はなさかぬリラ
花咲かぬリラ
山本 周五郎
Lesen Sie 花咲かぬリラ (はなさかぬリラ) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 18.378 Zeichen · 36 Bildschirme
来太はなにか思いついたという風に、ビールをひと口あおると、立ち上がって庭へ下りた。百坪足らずの前庭はいちめん茶色に枯れ縮んだ芝生におおわれているが、その一部にひとところ新しく土の鋤き返された所がある。そこは花を作る場所で、今年ももう球根類は植付けをすませたらしく、くろぐろと柔らかく湿気を帯びた土は、日光をたっぷりと吸って、あたかも生きて呼吸をしているかのごとくみえる。……来太はその花壇の向こうの隅、ちょうど野茨の生垣と接する所までいって足をとめた。そしてなにか捜し求めるように周囲を眺めまわしていたが、ふと身をかがめて、枯れた矮草の中から小さな木片で作った立札のような物を拾いあげた、点々と土にまみれた方二寸ばかりの、白いペンキ塗りの剥げかかった表に、「また逢う日まで」と小さく書いた字が読める。
「抜き棄てたのか、それとも、持っていったのだろうか」
来太はそっと呟やいた。五年まえの秋の、ある日のことが痛いほど切なく想い返された、しかしそういう回想におぼれたり、ながく感慨に耽ったりすることは彼の性質ではないとみえ、すぐにその小さな立札を枯れ草の中に突き立てると、それに対してにやっと笑いながら一揖した。