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Japanische Klassiker mit Furigana

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わかすぎさいばんちょう

若杉裁判長

菊池 寛

Lesen Sie 若杉裁判長 (わかすぎさいばんちょう) von 菊池 寛 (きくちかん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 10.238 Zeichen · 21 Bildschirme

Aozora Bunko

う。もう一つ若杉さんの心理に動いていた感情は、どんなことがあっても、冤罪の人を作ってはならぬという考えでした。よく裁判の話の時に、引き合いになる格言ですが、「たとい九人の有罪者を逸するとも、一人の冤罪者を作ることなかれ」という戒めです。若杉さんの胸には、そうした考慮が常に激しく動いていたらしいのです。

まあ、言葉を換えていいますれば、若杉裁判長の判決がいかにも寛大であったということは、裁判長の人道的な人格からの当然の帰結だといってもよいでしょう。若杉裁判長が、罪人に対する理解のこもった同情は、だんだん立会の検事にも伝染したとみえ、最初ほどは検事が頻々と控訴しなくなりました。

が、時々は、若杉さんに対して、課刑が寛大に失するという非難がないでもありませんでした。そうした非難をする人でも、若杉裁判長の人格の底深く植えつけられた信念の力強さを知ると、いつの間にか、そうした非難を忘れるともなく、捨ててしまうようでした。

若杉裁判長が、いかにも人情を噛み分けた、同情の溢るるような判決を被告に下した実例は数え切れないほどあります。放蕩無頼の兄が、父にたびたび無心をした揚げ句、父が応ぜぬのを憤って、棍棒を振って、打ってかかったのを居合せた弟が見るに見兼ね、棍棒をもぎとるなり、兄をただ一打ちに打ち殺した事件の裁判なども