Japanische Klassiker mit Furigana
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かつしかみやげ
荷風随筆集(上)
永井 荷風
Lesen Sie 荷風随筆集(上) (かつしかみやげ) von 永井 荷風 (ながいかふう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 133.224 Zeichen · 269 Bildschirme
主謀者の人物についても甚しく危険を感ずるのである。それに引かえてこういう貧しい裏町に昔ながらの貧しい渡世をしている年寄を見ると同情と悲哀とに加えてまた尊敬の念を禁じ得ない。同時にこういう家の一人娘は今頃周旋屋の餌になってどこぞで芸者でもしていはせぬかと、そんな事に思到ると相も変らず日本固有の忠孝の思想と人身売買の習慣との関係やら、つづいてその結果の現代社会に及ぼす影響なぞについていろいろ込み入った考えに沈められる。
ついこの間も麻布網代町辺の裏町を通った時、私は活動写真や国技館や寄席なぞのビラが崖地の上から吹いて来る夏の風に飜っている氷屋の店先、表から一目に見通される奥の間で十五、六になる娘が清元をさらっているのを見て、いつものようにそっと歩を止めた。私は不健全な江戸の音曲というものが、今日の世にその命脈を保っている事を訝しく思うのみならず、今もってその哀調がどうしてかくも私の心を刺※するかを不思議に感じなければならなかった。何気なく裏町を通りかかって小娘の弾く三味線に感動するようでは、私は到底世界の新しい思想を迎える事は出来まい。それと共にまたこの江戸の音曲をばれいれいしく電気燈の下で演奏せしめる世俗一般の風潮にも伴って行く事は出来まい。