Japanische Klassiker mit Furigana
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かつしかみやげ
荷風随筆集(上)
永井 荷風
Lesen Sie 荷風随筆集(上) (かつしかみやげ) von 永井 荷風 (ながいかふう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 133.224 Zeichen · 269 Bildschirme
殊に表通りの向側に日の光が照渡っている時などは風になびく柳の枝や広告の旗の間に、往来の人の形が影の如く現れては消えて行く有様、丁度燈火に照された演劇の舞台を見るような思いがする。夜になって此方は真暗な路地裏から表通の燈火を見るが如きはいわずともまた別様の興趣がある。川添いの町の路地は折々忍返しをつけたその出口から遥に河岸通のみならず、併せて橋の欄干や過行く荷船の帆の一部分を望み得させる事がある。かくの如き光景はけだし逸品中の逸品である。
路地はいかに精密なる東京市の地図にも決して明には描き出されていない。どこから這入って何処へ抜けられるか、あるいは何処へも抜けられず行止りになっているものか否か、それはけだしその路地に住んで始めて判然するので、一度や二度通り抜けた位では容易に判明すべきものではない。路地には往々江戸時代から伝承し来った古い名称がある。即ち中橋の狩野新道というが如き歴史的由緒あるものも尠くない。しかしそれとてもその土地に住古したものの間にのみ通用されべき名前であって、東京市の市政が認めて以て公の町名となしたものは恐らくは一つもあるまい。