Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

ja-reading.com

Lesen Sie japanische Klassiker online mit Furigana. Filtern Sie nach JLPT-Niveau, tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung und übersetzen Sie einen Satz.

かつしかみやげ

荷風随筆集(上)

永井 荷風

Lesen Sie 荷風随筆集(上) (かつしかみやげ) von 永井 荷風 (ながいかふう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 133.224 Zeichen · 269 Bildschirme

Aozora Bunko

また冬の雨降り濺ぐ夕暮なぞには破れた障子にうつる燈火の影、鴉鳴く墓場の枯木と共に遺憾なく色あせた冬の景色を造り出す。

この暗鬱な一隅から僅に鉄道線路の土手一筋を越えると、その向にはひろびろした火避地を前に控えて、赤坂御所の土塀が乾の御門というのを中央にして長い坂道をば遠く青山の方へ攀登っている。日頃人通の少ない処とて古風な練塀とそれを蔽う樹木とは殊に気高く望まれる。私は火避地のやや御所の方に近く猫柳が四、五本乱れ生じているあたりに、或年の夏の夕暮雨のような水音を聞付け、毒虫をも恐れず草を踏み分けながらその方へ歩寄った時、柳の蔭には山の手の高台には思いも掛けない蘆の茂りが夕風にそよいでいて、井戸のように深くなった凹味の底へと、大方御所から落ちて来るらしい水の流が大きな堰にせかれて滝をなしているのを見た。夜になったらきっと蛍が飛ぶにちがいない。私はこの夕ばかり夏の黄昏の長くつづく上にも夕月の光ある事を憾みながら、もと来た鮫ヶ橋の方へと踵を返した。

鮫ヶ橋の貧民窟は一時代々木の原に万国博覧会が開かれるとかいう話のあった頃、もしそうなった暁四谷代々木間の電車の窓から西洋人がこの汚い貧民窟を見下しでもすると国家の耻辱になるから東京市はこれを取払ってしまうとやらいう噂があった。