Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

ja-reading.com

Lesen Sie japanische Klassiker online mit Furigana. Filtern Sie nach JLPT-Niveau, tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung und übersetzen Sie einen Satz.

かつしかみやげ

荷風随筆集(上)

永井 荷風

Lesen Sie 荷風随筆集(上) (かつしかみやげ) von 永井 荷風 (ながいかふう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 133.224 Zeichen · 269 Bildschirme

Aozora Bunko

けだし東京市中における眺望の一直線をなす美観は、橋あり舟ある運河の岸においてのみこれを看得るが、銀座日本橋の大通の如き平坦なる街路の眺望に至っては、われら不幸にしていまだ泰西の都市において経験したような感興を催さない。西洋の都市においても私は紐育の平坦なる Fifth Avenue よりコロンビヤの高台に上る石級を好み、巴里の大通よりも遥にモンマルトルの高台を愛した。里昂にあってはクロワルッスの坂道から、手摺れた古い石の欄干を越えて眼下にソオンの河岸通を見下しながら歩いた夏の黄昏をば今だに忘れ得ない。あの景色を思浮べる度々、私は仏蘭西の都会は何処へ行ってもどうしてあのように美しいのであろう。どうしてあのように軟く人の空想を刺※するように出来ているのであろうと、相も変らず遣瀬なき追憶の夢にのみ打沈められるのである。

その頃私は年なお三十に至らず、孤身飄然、異郷にあって更に孤客となるの怨なく、到る処の青山これ墳墓地ともいいたいほど意気頗豪なるところがあったが今その十年の昔と、鬢髪いまだ幸にして霜を戴かざれど精魂漸く衰え聖代の世に男一匹の身を持てあぐみ為す事もなき苦しさに、江戸絵図を懐中に日和下駄曳摺って、既に狂歌俳句に読古された江戸名所の跡を弔い歩む感慨とを比較すれば、全くわれながら一滴の涙なきを得ない。