Japanische Klassiker mit Furigana
ja-reading.com
Lesen Sie japanische Klassiker online mit Furigana. Filtern Sie nach JLPT-Niveau, tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung und übersetzen Sie einen Satz.
かつしかみやげ
荷風随筆集(上)
永井 荷風
Lesen Sie 荷風随筆集(上) (かつしかみやげ) von 永井 荷風 (ながいかふう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 133.224 Zeichen · 269 Bildschirme
吉原の遊廓外にあった日本堤の取崩されて平かな道路になったのも同じ理由からであろう。実例としては明治四十三年八月に起った水害の後、東京の市民は幾十年を過ぎた今日に至るまで、一度も隅田川の水が上野下谷の町々まで汎濫して来たような異変を知らない。その代り河水はいつも濁って澄むことなく、時には臭気を放つことさえあるようになったのも、事に一利あれば一害ありで施すべき道がないものと見える。浅草の観音菩薩は河水の臭気をいとわぬ参詣者にのみ御利益を与えるのかも知れない。わたくしは言問橋や吾妻橋を渡るたびたび眉を顰め鼻を掩いながらも、むかしの追想を喜ぶあまり欄干に身を倚せて濁った水の流を眺めなければならない。水の流ほど見ているものに言い知れぬ空想の喜びを与えるものはない。薄く曇った風のない秋の日の夕暮近くは、ここのみならず何処の河、いずこの流れも見るには最もよき時であろう。江戸時代からの俗謡にも「夕暮に眺め見渡す隅田川……。」というのがあったではないか。