Japanische Klassiker mit Furigana
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かつしかみやげ
荷風随筆集(上)
永井 荷風
Lesen Sie 荷風随筆集(上) (かつしかみやげ) von 永井 荷風 (ながいかふう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 133.224 Zeichen · 269 Bildschirme
られたばかりに、もう一足も門の中に進入る事ができなくなったのかと思うと、なお更にもう一度あの悪戯書で塗り尽された部屋の壁、その窓下へ掘った金魚の池なぞあらゆる稚時の古跡が尋ねて見たく、現在其処に住んでいる新しい主人の事を心憎く思わねばならなかった。
私の住んでいる時分から家は随分古かった。それ故、間もなく新しい主人は門の塀まで改築してしまった事を私は知っている。乃ち私の稚時の古跡はもう影も形もなくこの浮世からは湮滅してしまったのだ……
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寺院と称する大きな美術の製作は偉大な力を以てその所在の土地に動しがたい或る特色を生ぜしめる。巴里にノオトル・ダアムがある。浅草に観音堂がある。それと同じように、私の生れた小石川をば(少くとも私の心だけには)あくまで小石川らしく思わせ、他の町からこの一区域を差別させるものはあの伝通院である。滅びた江戸時代には芝の増上寺、上野の寛永寺と相対して大江戸の三霊山と仰がれたあの伝通院である。
伝通院の古刹は地勢から見ても小石川という高台の絶頂でありまた中心点であろう。小石川の高台はその源を関口の滝に発する江戸川に南側の麓を洗わせ、水道端から登る幾筋の急な坂によって次第次第に伝通院の方へと高くなっている。