Japanische Klassiker mit Furigana
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かつしかみやげ
荷風随筆集(上)
永井 荷風
Lesen Sie 荷風随筆集(上) (かつしかみやげ) von 永井 荷風 (ながいかふう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 133.224 Zeichen · 269 Bildschirme
た。
この記事から飜て向島と江戸文学との関係を見ると、江戸の人は時代からいえば巴里人よりももっと早くから郊外の佳景に心附いていたのだ。俳諧師の群は瓢箪を下げて江東の梅花に「稍とゝのふ春の景色」を探って歩き、蔵前の旦那衆は屋根舟に芸者と美酒とを載せて、「ほんに田舎もましば焚く橋場今戸」の河景色を眺めて喜んだ。
最初河水の汎濫を防ぐために築いた向島の土手に、桜花の装飾を施す事を忘れなかった江戸人の度量は、都会を電信柱の大森林たらしめた明治人の経営に比して何たる相違であろう。
巴里の人たちは今でも日曜日には家族を引連れて郊外の青草の上で葡萄酒を飲む。しかしわれわれの新しき時代は絵のような美しい伝統を破棄するの急務に追われているばかりである。
この二、三日方々から頻に絵葉書が来る。谷川を前にした温泉宿や松の生えた海辺の写真が来る。友達は皆例の如く避暑に出かけたのだ。しかし自分はまだ何処へも行こうという心持にはならない。
縁先の萩が長く延びて、柔かそうな葉の面に朝露が水晶の玉を綴っている。石榴の花と百日紅とは燃えるような強い色彩を午後の炎天に輝し、眠むそうな薄色の合歓の花はぼやけた紅の刷毛をば植込みの蔭なる夕方の微風にゆすぶっている。