Japanische Klassiker mit Furigana
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かつしかみやげ
荷風随筆集(上)
永井 荷風
Lesen Sie 荷風随筆集(上) (かつしかみやげ) von 永井 荷風 (ながいかふう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 133.224 Zeichen · 269 Bildschirme
一帯に熱帯風な日本の生活が、最も活々として心持よく、決して他人種の生活に見られぬ特徴を示すのは夏の夕だと自分は信じている。
虫籠、絵団扇、蚊帳、青簾、風鈴、葭簀、燈籠、盆景のような洒々たる器物や装飾品が何処の国に見られよう。平素は余りに単白で色彩の乏しきに苦しむ白木造りの家屋や居室全体も、かえってそのために一種いうべからざる明い軽い快感を起させる。この周囲と一致して日本の女の最も刺※的に見える瞬間もやはり夏の夕、伊達巻の細帯にあらい浴衣の立膝して湯上りの薄化粧する夏の夕を除いて他にはあるまい。
町中の堀割に沿うて夏の夕を歩む時、自分は黙阿弥翁の書いた『島鵆月白浪』に雁金に結びし蚊帳もきのふけふ――と清元の出語がある妾宅の場を見るような三味線的情調に酔う事がしばしばある。
観潮楼の先生もかつて『染めちがえ』と題する短篇小説に、西鶴のような文章で浴衣と柳橋の女の恋を書かれた事があった。それをば正直正太夫という当時の批評家が得意の Calembour を用いて「先生の染めちがえは染ちがえなり。」と罵った事をも私は明治小説史上の逸話として面白く記憶している。