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Japanische Klassiker mit Furigana

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かつしかみやげ

荷風随筆集(上)

永井 荷風

Lesen Sie 荷風随筆集(上) (かつしかみやげ) von 永井 荷風 (ながいかふう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 133.224 Zeichen · 269 Bildschirme

Aozora Bunko

春の花見頃午前の晴天は午後の二時三時頃からきまって風にならねば夕方から雨になる。梅雨の中は申すに及ばず。土用に入ればいついかなる時驟雨沛然として来らぬとも計りがたい。尤もこの変りやすい空模様思いがけない雨なるものは昔の小説に出て来る才子佳人が割なき契を結ぶよすがとなり、また今の世にも芝居のハネから急に降出す雨を幸いそのまま人目をつつむ幌の中、しっぽり何処ぞで濡れの場を演ずるものまたなきにしもあるまい。閑話休題日和下駄の効能といわば何ぞそれ不意の雨のみに限らんや。天気つづきの冬の日といえども山の手一面赤土を捏返す霜解も何のその。アスフヮルト敷きつめた銀座日本橋の大通、やたらに溝の水を撒きちらす泥濘とて一向驚くには及ぶまい。

私はかくの如く日和下駄をはき蝙蝠傘を持って歩く。

市中の散歩は子供の時から好きであった。十三、四の頃私の家は一時小石川から麹町永田町の官舎へ引移った事があった。勿論電車のない時分である。私は神田錦町の私立英語学校へ通っていたので、半蔵御門を這入って吹上御苑の裏手なる老松鬱々たる代官町の通をばやがて片側に二の丸三の丸の高い石垣と深い堀とを望みながら竹橋を渡って平川口の御城門を向うに昔の御搗屋今の文部省に沿うて一ツ橋へ出る。