Japanische Klassiker mit Furigana
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かつしかみやげ
荷風随筆集(上)
永井 荷風
Lesen Sie 荷風随筆集(上) (かつしかみやげ) von 永井 荷風 (ながいかふう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 133.224 Zeichen · 269 Bildschirme
王子は宇治の柴舟のしばし目を流すべき島山もなく護国寺は吉野に似て一目千本の雪の曙思ひやらるゝにや爰も流なくて口惜し。住吉を移奉る佃島も岸の姫松の少きに反橋のたゆみをかしからず宰府は崇め奉る名のみにして染川の色に合羽ほしわたし思河のよるべに芥を埋む。都府楼観音寺唐絵と云はんに四ツ目の鐘の裸なる、報恩寺の甍の白地なるぞ屏風立てしやうなり。木立薄く梅紅葉せず、三月の末藤にすがりて回廊に筵を設くるばかり野には心もとまらず……云々。」そして其角は江戸名所の中唯ひとつ無疵の名作は快晴の富士ばかりだとなした。これ恐らくは江戸の風景に対する最も公平なる批評であろう。江戸の風景堂宇には一として京都奈良に及ぶべきものはない。それにもかかわらずこの都会の風景はこの都会に生れたるものに対して必ず特別の興趣を催させた。それは昔から江戸名所に関する案内記狂歌集絵本の類の夥しく出板されたのを見ても容易に推量する事が出来る。太平の世の武士町人は物見遊山を好んだ。花を愛し、風景を眺め、古蹟を訪う事は即ち風流な最も上品な嗜みとして尊ばれていたので、実際にはそれほどの興味を持たないものも、時にはこれを衒ったに相違ない。