Japanische Klassiker mit Furigana
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きくちよしょう
菊千代抄
山本 周五郎
Lesen Sie 菊千代抄 (きくちよしょう) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 36.178 Zeichen · 72 Bildschirme
「済まないのはあたしよ、あたしさえいなければ、あんたは渡島屋の主人になって、りっぱな旦那でくらせたんだわ、それをあたしがいたばっかりにこんな、こんなみじめな」
「もうたくさんだ、おいく、やめて呉れ、もうたくさんだ」
「あたしあんたに済まなくって、申しわけなくって、これまでどんなに蔭でお詫びを云っていたか、しれないわ、堪忍して、あんた、堪忍して」
おいくは良人の胸にしがみついて泣いた。それから二人がどんなふうに言葉をとり交わしたか、どのようにして諍いがおさまったか、菊千代にはよく思いだすことができない。……菊千代は説明しがたい感動にうたれ、いつか自分も泣いていた。それが諍いではなく、劬りあいであることがすぐにわかった。竹次が病気で寝ているので、おいくがそっとぬけだして稲刈りを始めた。それと知って竹次が追って来て、そんな諍いあいになったものらしい。
ごくありふれたことなのだろうが、ふだんどちらも無口で、心に思いながら口にだしてはなにも云えない、お互いが心のなかで、お互いに苦労をかける、済まないと思っていた。それが今、飾らない言葉で互いの口をついて出たのだ。