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Japanische Klassiker mit Furigana

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きくやしき

菊屋敷

山本 周五郎

Lesen Sie 菊屋敷 (きくやしき) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 36.620 Zeichen · 71 Bildschirme

Aozora Bunko

けれども小松が訪ねて来て、とうとう正念寺へゆくことはできなくなった、そして自分は一生を晋太郎の養育に捧げる決心をしたのだ。

――なにか仕合せなことがあるように思った、あのときの予感は、偶然にではあろうが当った、はじめの幸福は、手にとることもできなかったが、晋太郎をわが子と呼んだ明け昏れの仕合せは、自分のものだった。……正念寺へはゆかなかったが、あの手紙の主も自分の身のまわりから離れなかった、その主が誰であるかというたしかなことは、遂に知る機会がなかったけれど、その人がいつも自分のことを案じ、見まもっていて呉れると思う、あのひそかなよろこびも自分のものだった。……二つのものはこの菊屋敷で成長した、自分は絶えずその成長をみつめて来たが、その二つとも今はもう自分のものではなくなってしまった。

――あの朝のように、自分はまた独りでこの菊畑に立っている、幾春秋、自分を慰め、ちからづけて呉れたもの、生き甲斐を与えその日その日を充実させて呉れたもの、それはもう再び此処へは帰って来ない、おそらく永久に帰っては来ないだろう、そして来る秋あき、自分はただ独りでこの菊の咲くのを見るのだ。