Japanische Klassiker mit Furigana
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もえぎいろのくき
萌黄色の茎
田中 貢太郎
Lesen Sie 萌黄色の茎 (もえぎいろのくき) von 田中 貢太郎 (たなかこうたろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 4.481 Zeichen · 9 Bildschirme
「ありませんわ」
「往く処がなくっても、好い人はあるだろう」
北村さんは口ではあっさりと云ったが、こっちの手首に絡んでいた北村の手はほてっていた。
「私のような者は、見向いてくれる方もないのですよ」
「あるよ、あったらどうする、……あったら困るだろう」
「あったらありがたいのですわ」
「ほんと」
北村さんの眼はこっちの眼をまともに見つめた。……
「おかしいよ、お菊さんまた考えこんだよ、あ、あれだよ、お菊さんは……」
お幸ちゃんの声がするのでお菊さんは夢から覚めたようにしてその方を見た。お幸ちゃんは学生に首ったまへ手をやられたなりに、学生と並んで板壁に凭れて笑っていた。
「お幸ちゃんじゃあるまいし、あたいにゃ、若旦那はないのだよ」
「あるわよ、針工場さんがあるわよ」
「痴」
お菊さんは云いあてられたのでちょっと気まりが悪かった。
「好いわよ、そんなに気まりを悪がらなくたって」
お幸ちゃんの首ったまを抱いている学生が口を挟んだ。
「針工場って、何人だい、あの肥った親爺かい、好く祝儀をくれる」
「そうよ、針工場の旦那よ、親爺なんて云うとお菊さんが怒ってよ」
も一人の学生がそれを聞くとお菊さんのほうを見て云った。