Japanische Klassiker mit Furigana
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もえぎいろのくき
萌黄色の茎
田中 貢太郎
Lesen Sie 萌黄色の茎 (もえぎいろのくき) von 田中 貢太郎 (たなかこうたろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 4.481 Zeichen · 9 Bildschirme
「針工場夫人、ここへお出でよ、お祝いに一杯あげよう」
お菊さんはてれかくしに、
「そう、くださるの」
と、云って腰をあげてそのテーブルの方へ歩いて往きかけたところで、痩せた手でカーテンの端を捲って入って来た者があった。背のひょろ長い黒い衣服を着た、頬のすっこけた老婆であった。それは一眼見て料理を註文に来た客であると云うことが判った。
「いらっしゃいまし」
お菊さんがそのまま老婆の前へ往って立った。
「出前を頼みたいが」
お菊さんは見知らないはじめての客であるからまず処を聞いた。
「何方様でございましょう」
「はじめてですがね、この前の赤いポストの処を入って、突きあたってから、左へ曲ってくと、寺がありますね、その寺について右に曲ってくと、もう寺の塀が無くなろうとする処に、右に入って往く巷があるがね、その巷の突きあたりだよ、北村って云います」
お菊さんはもしかするとあの北村さんの家ではないかと思った。
「北村さん、宜しゅうございます、お料理は何にいたしましょう」
「魚のフライと、他に二つばかり、何でも好いから見つくろっておくれよ、家の旦那は時どきこちらへ来るそうだ」