Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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おちばのとなり

落葉の隣り

山本 周五郎

Lesen Sie 落葉の隣り (おちばのとなり) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 28.877 Zeichen · 57 Bildschirme

Aozora Bunko

盃を持つ手に力がはいり、指の節がぐっと高くなった。

――こんなことはざらにあるんだろうな。

いまのおれのように、こんなみじめなおもいをしている者が、この世の中にどれほどたくさんいるだろうか、と繁次は心の中で思った。

「どうしたの、にいさん」

こう云われて眼をあげると、さっきの年増女が前に来ていた。

「あたしおつぎっていうの」女はにっと笑いかけながら燗徳利を持った、「あら、ちっとも減ってないじゃないの、お酌しましょう」

「自分でやるからいいよ」

「そんなに嫌わなくってもいいでしょ」おつぎは酌をしながら繁次を見た、「あたしまえからあんたのことよく見かけていたのよ、今日はどうしてこんなとこへ来たの」

繁次は返辞ができなかった。

「飲みたかったからさ」とようやく云って、彼は思いだしたように盃をさし出した、「――一つやらないか」

「いただくわ」おつぎは盃を受取った、「一つだけね、ありがと」

こんなところにいるとつい飲むようになってしまう。嫌いだったのがいまは好きになったが、酔うとだらしがなくなるから、店にいるあいだは飲まないようにしているのだ、とおつぎは云った。言葉は乱暴だが、さっぱりとした中になんとはないあたたかみがこもっていて、繁次はいつかあまえたいような気分にひきこまれた。