Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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おちばのとなり

落葉の隣り

山本 周五郎

Lesen Sie 落葉の隣り (おちばのとなり) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 28.877 Zeichen · 57 Bildschirme

Aozora Bunko

「ちっとも飲まないじゃないの」やがておつぎが訝しそうに云った、「あたしがいちゃあ邪魔」

「そうじゃない」繁次は眼をそらして、呟くように云った、「初めてだから、まだ」

おつぎの眼に、なんと云いようもない色が動いた。店の中は殆んど客がいっぱいで、皿小鉢の音や、話したり笑ったりする高ごえや、三人いる小女たちの甲だかい呼び声などのため、繁次のいるその隅だけ、一とところ穴があいたように感じられた。

「あたし小さいときにね」とおつぎが云った、「おみおつけの鍋へ踏みこんで、こっちの足に火傷をしたことがあるのよ、五つの年だったかな、火からおろしたばかりで鍋はぐらぐら煮たっていたの」

「あぶねえ――」繁次はきゅっと顔をしかめた。

「おっ母さんがうどん粉に酢を入れて練ったのを塗って、晒しで巻いてくれるあいだ、あたし死んじゃいたい死んじゃいたいって、声っ限り泣いてたわ」

「痛かったろうな」

「痛いためばかりじゃないの、どう云ったらいいかな」おつぎは機械的に燗徳利を持ったが、繁次の盃にまだ酒があるのを見て、それを下に置きながら続けた、「こんなたいへんなことになったら、もう生きてはいられないだろう、いっそ死んじまうほうがましだ、っていうような気持だわね、そうよ、そんなような気持だったわ」