Japanische Klassiker mit Furigana
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いっぺいそつ
蒲団・一兵卒
田山 花袋
Lesen Sie 蒲団・一兵卒 (いっぺいそつ) von 田山 花袋 (たやまかたい) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 28.948 Zeichen · 59 Bildschirme
煙、上を仰ぐと、同じ畠(はたけ)の斜坂(さか)の爪先(つまさき)上がりになっている間に一条(ひとすじ)の路がうねうねと通って、その向こうは煙るような楢林(ならばやし)の灰色が連続した。
高い山には炭焼きの煙が見える。
お作は家を出てその畠道を歩いた。つらいその身の境遇や、悲しい追懐よりも、ひもじいという念が第一にその胸に押し寄せてきて、何か畠に食うものはないかとあたりを見まわした。牛蒡(ごぼう)畑、大根畑が一面に連なり渡っていたが、ふと、五、六間先に葱(ねぎ)の白い根を上げた畑が眼に入った。
われを忘れて、畑の中に入って、ほとんど人の物を盗むなどという念も起こらぬ中に、たちまち一束の葱を取って、それを揃(そろ)えて、もとの畠の道に出た。その時、同じ畠道を、一人の男――かねて見知っている温泉宿の年寄りの番頭がこっちに歩いてきた。
葱を一束抱えてお作の立っているのを、ふと眼につけて、
「葱かね!」
と言って笑って通り過ぎた。
お作はぎょっとして我に返った。自己(おのれ)の罪跡を見つけられたと思って、身が地にすくむような気がした。はげしい飢餓をも忘れて、茫然(ぼうぜん)として立っていた。