Japanische Klassiker mit Furigana
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いっぺいそつ
蒲団・一兵卒
田山 花袋
Lesen Sie 蒲団・一兵卒 (いっぺいそつ) von 田山 花袋 (たやまかたい) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 28.948 Zeichen · 59 Bildschirme
年のころ三十七、八、猫背で、獅子鼻で、反歯で、色が浅黒くッて、頬髯が煩さそうに顔の半面を蔽って、ちょっと見ると恐ろしい容貌、若い女などは昼間出逢っても気味悪く思うほどだが、それにも似合わず、眼には柔和なやさしいところがあって、絶えず何物をか見て憧れているかのように見えた。足のコンパスは思い切って広く、トットと小きざみに歩くその早さ! 演習に朝出る兵隊さんもこれにはいつも三舎を避けた。
たいてい洋服で、それもスコッチの毛の摩れてなくなった鳶色の古背広、上にはおったインバネスも羊羹色に黄ばんで、右の手には犬の頭のすぐ取れる安ステッキをつき、柄にない海老茶色の風呂敷包みをかかえながら、左の手はポッケットに入れている。
四ツ目垣の外を通りかかると、
「今お出かけだ!」
と、田舎の角の植木屋の主婦が口の中で言った。
その植木屋も新建ちの一軒家で、売り物のひょろ松やら樫やら黄楊やら八ツ手やらがその周囲にだらしなく植え付けられてあるが、その向こうには千駄谷の街道を持っている新開の屋敷町が参差として連なって、二階のガラス窓には朝日の光がきらきらと輝き渡った。左は角筈の工場の幾棟、細い煙筒からはもう労働に取りかかった朝の煙がくろく低く靡いている。